木津川市役所前に設置された巨大鍬

地域社会が抱える問題の一つに、新住民と旧住民の間に生じる心の軋轢がある。木津、加茂、山城の三町合併で4年前に誕生した木津川市。悠久の歴史・文化と自然に育まれ、新旧の住民が混在するベッドタウンとして発展を遂げてきた。現在も一部地域で宅地開発が進み人口は増え続けている。一方、旧住民の多い山手は過疎化が深刻で、活性化の展望は乏しい。市の発展の影に、失われゆく自然と住民の絆が隠れ、地域の隔たりを深めている。市の発展を望むには、地域住民の融和を促し絆を紡ぐ作業が必要だ。農を介して自然の豊かさを享受し、希望の田畑を「開墾」したい。そんな願いを作品に込めた。

2011年11月
まちづくりの会議にも同市在住アーティストとして参加するようになる。徐々に町のスローガンは"農あるまちづくり"となっていき、予定が遅れている造成工事もペースが早くなってくる。皮肉にも私の自宅とアトリエの隣が造成の最終地で、複雑な思いと目の前の壮大な森を切り崩されていくのを想像すると、怒りすら覚えくる。そして木津川アート2011が開幕され、私は鉄と檜の木を素材として、7mの大きな鍬を制作。市役所の正面に展示。去年の木津川アートに比べ、参加者数も増え数万人にも上った。

2012年5月
UR 都市機構、最後のニュータウン開発となるけいはんな学研都市・木津中央地区において、地域の資源である豊かな自然と盛んな農業、更には魅力ある歴史文化を活用した「農(みのり)のまちづくり」をコンセプトに、作品“無題”(大きな鍬)をモニュメントとして街開きが開催された。